経営をする上で、最も大事なことの一つに挙げられるのが「資金繰り」です。そして、その資金繰りをみるためのものが「資金繰り表」です。

銀行から借入れをされた経営者の方であれば、一度は作られた経験があると思います。でも、資金繰り表って一体作って何の意味があるの?と疑問を感じることはありませんか?

もう少しだけ資金繰り表の活用方法を知ってみると、もしかしてその意味を見い出せるかもしれません。

そもそも資金繰り表を作成する目的ってなに?

そもそも資金繰り表って何のために作っていますか?

もちろん「資金繰りを管理するため」に作成されていると思います。

じゃあ、どのような状態になれば「資金繰りが管理できている」という状態になるのでしょうか?

「資金繰りの管理ができている」という定義は人にって違うと思いますが、
私は以下の「4つのポイント」が把握できていて、さらに将来のお金の不安を減らすための「実行可能な対応策が練られている状態」と考えています。

  1. いつ単月での資金収支が黒字になるのか?
  2. 資金残高がマイナスになるのか?
  3. 資金残高がマイナスになるのはいつか?
  4. 資金残高がマイナスになる場合には、その金額はいくらか?

繰り返しですが、資金繰り表を作成する目的は、上記4つのポイントを把握した上で、課題があれば、その課題に対して実行可能な対応策を練ること、と考えています。

資金繰り表の必要性を感じない場合は?

もし、会社を経営していて資金繰り表を必要としていないのであれば、それは会社が儲かっていて、そもそも管理する必要性が低い状況にあるのだと思います。

誤解を恐れず言うと、資金繰り表の必要性を感じていないのであれば、資金繰り表なんて作成する必要はありません。

経営をする上で「お金の不安がない」のだと思います。

そんな状態で資金繰り表を作ったとしても、眺めておしまいになるのが関の山です。

経営者や経理財務部長が眺めて「ふ~ん」で終わっている場合には、ほぼ役立っていないので作る意味がありません。

このため資金繰り表を作成するのはやめて、その時間を、もっと売上を上げたり、従業員が生き生きと働くための仕組作りをした方がいいと思います。

注意点は、自分や自社にとっては「資金繰り表なんて不要だ」と思っていても、単なる思い違いで、「実はちゃんと資金繰り管理をしていかないといけない状況」だった、というケースが山ほどあるので、自社の状況をちゃんと客観視して判断するようにしましょう。

なお、自社には必要なくても、銀行から借入れをしていたり、第三者から出資を受けているような場合には、資金繰り表の提出を求められることがあるので、そのような経営の協力者に対しては、誠実に作成して提出することをおススメします。

資金繰り表は不安の大きさを定量化するツール

先ほど資金繰り表で把握する4つのポイントをお伝えしましたが、その意味をもう少し掘り下げていきたいと思います。

1.いつ単月での資金収支が黒字になるのか?

資金繰りに不安があるということは、「毎月の収支が赤字の状態」にあると思います。

まずは自社の資金収支が黒字になれば、あとは事業を継続すれば少しずつでも資金が溜まっていく状態ができますので、資金収支の黒字化は、経営する上で最も重要なポイントになります。

2.資金残高がマイナスになるのか?

資金残高がマイナスになるということは、「このままいくとお金が払えない状態になる」ということを意味します。

このため、もっと売上を上げるか、コストを切り詰めるか、借入れをするか、出資を受けるかをしない限り、会社の経営は立ち行かなくなりますので、100%何かしらの策を打たないといけないことがわかります。

3.資金残高がマイナスになるのはいつか?

資金残高がマイナスになる場合、それが将来のいつの時点かを把握することで、自社に残された策を打つための猶予期間を知ることができます。

つまり、その猶予期間が長ければ長いほど、収支を改善させるために色々な選択肢を取ることができます。時間をかけて大きな策を打つことも可能ですし、仮に小さなコスト削減であっても累積的に効果が出ます。

一方で、この猶予期間が短ければ、自社が取り得る策というのは限定的になります。
常に自社に残された猶予期間を把握するためにも、資金繰り表は最低毎月アップデートすべきです

4.資金残高がマイナスになる場合には、その金額はいくらか?

資金残高がマイナスになる場合に、「そのマイナスの額」を把握することで、収支改善のためにどれぐらいの努力が必要なのか、どんな策を打つべきなのか検討する材料となります。

仮にマイナスの額が大きいのであれば、小さいコスト削減などの策を練ってもほとんど効果がありません。このような場合には、第三者から出資を受けるなどの大きな策を打つことを検討することも必要です。

もちろん大きな策と合わせて、小さい改善効果を積み上げることも重要なのは言うまでもありません。

まとめ

経営をする上でのお金に関して不安がない企業は、例えば上場企業などの一部の企業のみで、世の中に存在する大半の会社は、経営する上でのお金に関して何らかの悩みを抱えていることが普通です。

赤字ではなくとも、設備投資や運転資金などを銀行から借り入れた上で、資金繰りを成り立たせているというのが通常です。

また、単に儲かっていなくてお金や資金繰りに不安があるというだけでなく、どんどん売上が増えて会社は大きくなっているが、人の採用や人件費、開発資金などの先行投資で、資金が不足気味になるケースも多くあります。いわゆるスタートアップやベンチャー企業によくあるケースです。

資金繰り表は、このような経営上でお金に不安がある時に、このまま時が進んでいくと、お金がいつ、いくら足りなくなるのかを「定量化」するためのツールです。

定量化することで、「いつまでに」「いくらの資金手当てをしないといけないのか」が明確になり、そこを乗り越えるために「何をするのか」の具体的行動を考える思考になります。

これまで資金り表を活用しきれていなかった場合、資金繰り表なんて不要だと感じていた場合は、改めて資金繰り表について考えなおしてみるのはどうでしょうか。