今回は、法人および個人の事業者(以下、会社と表現します)が資金繰りに困った際に使える補助金について解説します。
最初に注意点ですが、今回説明する補助金は「売上が下がった分の補填」であったりとか、「赤字を補填」する補助金ではありません。
会社の資金繰り支援を、税理士や公認会計士等のプロフェッショナルにお願いする際の費用が補助されます。
この制度は「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」(以下、経営改善補助金と表現します)と呼ばれています。

制度としては2013年からあり、既に8年ほど運用されており、全国で19,000件以上の利用実績があります。
経営改善補助金はどんな場合に使うのか
会社が借入金の返済が契約通りできなくなった場合、金融機関に対してリスケジュール(一時的に借入金の元本返済額を減らしてもらう、契約期間を延ばしてもらうなど)というものをお願いすることがあります。
スケジュールをする際に、金融機関からは事業計画やそれに基づく返済計画作成するように求められることがあります。
会社やその社長だけでは、金融機関が納得するような事業計画や返済計画を作成することができない場合が多いです。
また、客観性の観点から、金融機関側からも税理士や公認会計士等と一緒に作成を要望されることもあり、その際の税理士や公認会計士に依頼する費用を補助するという制度になります。
この記事を記載している2021年1月時点において、新型コロナウィルスの影響を受けて中小企業の資金繰りも厳しくなっています。
今後の事業の立て直しや資金繰りの見直しを図りたいという会社も多いと思います。
そのような場合に、この経営改善補助金の検討余地は多いにあります。
経営改善補助金を使うメリット
この経営改善補助金は、
「会社の経営や資金繰りに不安がある」
「事業の方針、効果ある改善策を改めて時間を取って考えてたい」
という社長にとってはとてもメリットのある制度になります。
社長一人で事業のことを考えていても、なかなかよいアイデアがでないことも多いです。
そんな行き詰った中で、同じ目線に立って真剣に考えてくれる税理士や公認会計士と、アイデアの壁打ちをしていきます。
コンサルティングのプロから客観的な意見をもらうことができれば、今後の事業の進め方も整理することができます。
但し、税理士や公認会計士への費用が発生するため、その費用負担の点から依頼のハードルが高いのが通常ですが、そのコンサルティング費用の2/3について補助金を活用することができます。
1/3の費用負担は発生するものの、金融機関からの資金繰り支援(リスケジュール、借換え融資、新規融資など)を受けることができるため、トータルの資金繰り面は緩和されます。
今後の会社の経営について、やることが整理され、さらに資金繰りの不安も小さくなる、というのが、この経営改善補助金を使うメリットになります。
経営改善補助金が申請できる会社とできない会社
経営改善補助金を申請する場合には、
①株式会社等の法人又は個人事業主であること
②金融機関からの借入金があり、資金繰り改善が必要であること
という条件を充たしていることが必要です。
また、医療法人は、常時使用する従業員が300名以下の場合には利用可能となります。
※実際に申請するに際しては、もう少し細かめに条件や状況の確認が必要なのでご注意ください。
なお、以下の法人はこの制度が使えません(2021年1月15日時点)。基本的には営利を目的とした法人が対象になっているということです。
- 社会福祉法人
- 特定非営利活動法人(NPO法人)
- 一般社団法人及び一般財団法人
- 公益社団法人及び公益財団法人
- 農業組合法人及び農業協同組合
- 生活協同組合
- 学校法人
経営改善補助金の額はいくらでるの?
経営補助金の額は、会社が負担する費用額の2/3で、上限額が200万円(消費税込)となっています。
但し、会社の規模によって上限額が異なるので注意です。
この経営補助金における「会社の規模」は、「売上高」と「有利子負債」の金額によって、決まります。
なお、有利子負債は「銀行からの借入金」と考えてください。
社長や役員からの借入金(役員借入金)は有利子負債に含まれませんのでご注意ください。
受けられる補助金の額は、以下表の通り決められています。
例えば、年商(売上高)1.5億円、借入金が70千万円の会社であれば、
200万円のコンサルティングが66.7万円で受けられます。
(費用200万円 – 2/3の補助金133.3万円 = 実質負担額 66.7万円)
さらに、信用保証協会の保証協会付融資を受けている場合(ほとんどの中小企業が該当します)、プラスで信用保証協会から補助金が出るケースもあります。
その場合にはもっと小さな費用負担で、がっつりとしたコンサルティングが受けられることになります。
信用保証協会からプラスの補助金が出るかどうかは、その都道府県によって異なりますので、会社が借入金の保証を受けている都道府県の信用保証協会のHPなどで確認してみてください。
会社の 規模 | 売上高と有利子負債 の金額 | 補助金の額 (上限額) |
---|---|---|
小規模 | 売上高が1億円未満、かつ、 有利子負債残高が1億円未満 | 66.6万円(100万円×2/3) |
中規模 | 売上高が10億円未満、かつ、 有利子負債残高が10億円未満 | 133.3万円(200万円×2/3) |
中堅規模 | 売上高が10億円以上、又は、 有利子負債残高が10億円以上 | 200.0万円(300万円×2/3) |
この経営改善補助金って本当に使われているの?
補助対象の費用や条件がかなりマニアックな補助金であるため、会社の社長は、ほとんどこの補助金のことは知りません。
一方で、会計事務所、税理士、公認会計士などの人であれば、この経営改善補助金のことを知っている人は多いです。
では、世の中でこの経営改善補助金がどれぐらい使われているの?というのは気になると思います。
この経営改善補助金の受付開始は2013年3月から始まっているのですが、2020年9月末までで累計19,039件が利用されています。
各年度別の利用件数は、以下の表の通りですが、相当数の中小企業が利用されている印象です。
期間 | 利用件数 |
---|---|
2013/3/8~2014/3/31 | 2,281件 |
2014/4/1~2015/3/31 | 5,243件 |
2015/4/1~2016/3/31 | 3,509件 |
2016/4/1~2017/3/31 | 2,268件 |
2017/4/1~2018/3/31 | 1,979件 |
2018/4/1~2019/3/31 | 1,599件 |
2019/4/1~2020/3/31 | 1,650件 |
2020/4/1~2020/9/30 | 510件 |
累計 | 19,039件 |
情報元:中小企業HP、中小企業再生支援協議会の活動状況(令和2年度第2四半期)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/kyougikai/202002.html
「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」利用申請等実績の推移より
経営改善のための補助金を使う場合はどうしたらいいの?
この経営改善補助金は、「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」という制度であるため、「認定支援機関」に相談することが必要となります。
「認定支援機関」って誰?となりますが、
多くの会計事務所(個人会計事務所/税理士法人)がこの認定支援機関として認定を受けています。
このため経営改善補助金を利用してみたいと思った際には、まずは顧問の会計事務所に聞いてみるが一番身近です。
または、こちらのお問い合わせフォームから、弊社にお問合せ頂ければ、適切にアドバイスさせて頂きます。
不透明な時代なので、少しでも資金繰りを安定させて、やるべき経営改善に向けて一歩一歩一緒に進めていきましょう。