コロナの影響を受け手、足もとの資金繰りが厳しい顧問先もたくさんいると思います。
2008年のリーマンショックの際には、中小企業の資金繰り対策として、2009年12月に金融円滑化法が作られました(2013年3月末に終了)。
その流れを受けて、資金繰りに困った中小企業が、銀行に借入金のリスケジュールを相談する際の心理的ハードルは相当下がりました。
2021年以降は、コロナの影響を受けて資金繰りの相談が増えることが見込まれますので、その準備に備えていきたいと考えています。
顧問先にリスケジュールを相談された際の3つのポイント
顧問先にリスケジュールの相談を受けた際の3つのポイントは、
- リスケジュールに安直な考えの社長には注意する
- 銀行にとっての経済合理性を考える
- 場合によっては顧問先に厳しい意見も伝える
です。
かつては、銀行へのリスケジュールの相談は、企業の存続をかけて行うものでした。
本来はそれほど緊張感を持って行うべきものですが、今はそこまでの認識を持たないままにリスケジュールの相談をするケースも多いように感じます。
リスケジュールはあくまでも手法でしかなく、実際にはその後の改善が本題だからこそ、この3つのポイントを注意深く考えた上でリスケジュールの要請をすべきです。
※本記事での「銀行」は「信用金庫」や「信用組合」も含んだ概念として記載しています。
1.リスケジュールに安直な考えの社長には注意する
最近はネットにたくさんの情報が溢れています。
社長もリスケジュールに関する情報を収集して、「リスケジュールは結構簡単にできる」という安直な考えを持って相談に乗ってこられるケースもあります。
確かにこの社長の認識は半分正しいです。
2008年にリーマンショックが起こり、その後2009年に金融円滑化法が作られました。
実際に、金融円滑化法ができた後は、中小企業が銀行にリスケジュールをお願いするハードルは一気に下がりました。
国が政策として、中小企業の資金繰り支援を進めたことで、資金繰りで破綻する中小企業の数は抑えれたと考えられます。
でも、資金繰り破綻がおさえられたのとは反対に、「資金繰りに困れば、銀行にリスケジュールのお願いができる」という風潮が世間に生まれたのも事実です。
2009年以前であれば、銀行にリスケジュールをお願いするのは、中小企業の社長にとって相当勇気のいる決断でした。
現在においても、リスケジュールをお願いするという状況は「経営が想定した通りに行っていない」ということに変わりありません。
もっと危機感を持つべきですが、顧問先の社長にそこの認識が欠けている場合は、注意が必要です。
そこの危機感がなければ、仮にリスケジュールができたとしても、その後の業績の改善がうまくできずに、再び困ってしまうことが目に見えています。
認識が甘い社長には、そこに気付いてもらうようなコミュニケーションが必要となります。
2.銀行にとっての経済合理性を考える
銀行は、慈善事業で営まれているわけではありません。
例えば、
- 株式市場に上場している金融機関であれば「投資家のため」
- 信用金庫や信用組合であれば「その地域の出資者のため」
に経営がされています。
資金繰りに困った中小企業を支援するために経営がなされているわけではありません。
このため、
「ある会社に対してリスケジュールすること」が、
「その銀行にとっても経済的な合理性がある」という状況でないと、
銀行もリスケジュールに応じることができません。
ここは銀行にとっての大原則になります。
目の前の資金繰りのピンチに意識がいってしまい、社長、相談を受ける会計事務所側ともに忘れがちになる非常に重要なポイントです。
銀行にリスケジュールに応じてもらうためには、結果として銀行にとってもメリットがある、という説明をしていく必要があるのです。
じゃあ「銀行にとってのメリット」って何なの?ということになりますが、
「銀行にとってのメリット」は、端的には「リスケジュールに応じた方が、貸したお金の回収額が大きくなる」という点です。
嘘やおどし的な意味合いでは絶対に言ってはいけないですが、
- このままだと会社は本当にピンチの状況になって、借入金を返済できなくなる可能性もあるが、
- 今リスケジュールに応じて頂くと、その間に会社を立て直しして、どこかの時点で再度通常通り返済できるようになると考えている
ということを、社長が本心から言えるかどうかになります。
社長が心の中から、改善を望んでおり、それを実際にできると考えている場合には、リスケジュールをした方が銀行、顧問先のどちらにとってもメリットがあるため、具体的に次のアクションを考えていくステップに進みます。
3.場合によっては顧問先に厳しい意見も伝える
社長は、経営に対してコミットしていることが多いです(素晴らしいと思います)。
でも、それが原因で、自分では業績の改善が難しいと薄々分かっていたとしても、途中でやめることができない状況に追い込まれていることもあります。
例えば、
- 受注の望みが薄い大型案件に過度な期待を持っている
- 新規得意先との商談に過度に期待している
- 新商品が大ブレイクすると期待している
- ネット通販などの販売チャネルに過度に期待している
決して可能性を否定するわけではないですが、あまりに過度な期待を寄せていることもあります。
それらを過去に照らし合わせて客観的に見れば、
- 過去にそんな大型案件を受注したことがない
- 仮に新規得意先から受注できても、最初は利益がでない案件が多い
- 過去にそこまで大ブレイクした新商品はない
- これまでネット通販は全然伸びてこなかった(時間がかかり過ぎる)
という事実があることも多いです。
顧問会計事務所の方であれば、社長の性格や過去の情報を把握していると思います。
特に、客観的に見て無理のある改善策に期待している場合には、リスケジュールの話し合い時に、銀行からも同じ指摘が入り、会社の信頼度や評価を下げる可能性もあります。
このような場合には、踏みとどまらせて、落ち着いて考えるように伝えるのも重要なポイントになります。
まとめ
資金繰りに困った顧問先から相談を受けた際の3つのポイントを解説しました。
再度記載しますが、
- リスケジュールに安直な考えの社長には注意する
- 銀行にとっての経済合理性を考える
- 場合によっては顧問先に厳しい意見も伝える
が3つのポイントになります。
基本的なポイント、考え方ですが、当事者となると意外と忘れがちになるので注意が必要です。
会計事務所、公認会計士、税理士が、これまで以上に中小企業の資金繰りにおけるセーフティネット機能を果たせるようになると、中小企業の経営者もより安心できるのではないかと考えています。